もうじきひな祭り。とは言ってもここシンガポールではそんなムードでもない様子。気温も変わらず摂氏30度前後に毎日の夕立ち(スコール)。あ〜、変わり行く季節を感じたい〜と思っていた折、こちらにお住まいの友人から『吊り雛』を飾ったから、とお招きに預かった。
ちりめんを使った小物飾りは全て友人の手作り。天井から1メートル半はあろう、たくさんのかわいいちりめん小物たちが吊るされてある。なんでも江戸後期ごろから伊豆は稲取(いなとり)地方に伝わる伝統のお飾りらしい。雛壇の脇に吊るして楽しんだとか。また、雛壇などに手の届かない庶民などは、それを代わりにしたのだそう。長女の初節句や無病息災、また良縁を願って飾られたらしい。
今ではちりめんを見つけることすら難しい時代。それをひと針ひと針の心を込めて造られた小物たち。ウサギなどの小動物や手鞠などの小物、それに草履や桃の実などを見ると、あ〜、桃の節句だな〜と、本当に心が和む。こんな機会でも無ければ味わえなかっただろう、思いがけないシンガポールでの雛飾り。それを見ながらの美味しいお茶と楽しい会話。なんとも素敵な時間が流れたひと時だった。